2013年9月16日月曜日

小児用肺炎球菌ワクチンが新しくなります

 小児用肺炎球菌ワクチンは、髄膜炎の防止に役だっています。肺炎球菌による髄膜炎の罹患率(5歳未満人口10万人あたり)を過去数年間で比べると、2008~2010年の平均値が2.8人、2011年が2.1人(減少率25%)、2012年が0.8人(減少率71%)です。ワクチンの公費助成が始まった2011年以降、罹患率は着実に減り続けています。ちなみに、ヒブによる髄膜炎の罹患率も同様で、2008~2010年の平均値が7.7人、2011年が3.3人(減少率57%)、2012年が0.6人(減少率92%)です。二種類のワクチンの絶大な効果をご理解いただけると思います。
 
 しかし、現在使われている小児用肺炎球菌ワクチンは、残念ながら無敵ではありません。肺炎球菌は自らを包む莢膜の性質によって93種類に分けられており(血清型といいます)、今のワクチンは7種類の血清型だけに対抗できます。7価のワクチンという意味で「PCV7」とよばれています。93種類の血清型がすべて凶悪という訳ではなく、7種類だけでも重い病状をきたす肺炎球菌感染症の約7割を防ぐことができますが、もっと効果を上げて減少率100%(つまり重症肺炎球菌感染症の撲滅)を目指したいところです。

 きたる11月1日に新しい13価のワクチン「PCV13」が発売されます。これまでの7種類の血清型のほかに、さらに6種類の血清型が加わります。これによって、重い病状をきたす肺炎球菌感染症の約9割を防ぐことができます。欧米諸国では3~4年前にPCV7からPCV13への切り替えが済んでおり、その効果と安全性は十分に証明されています。日本でもようやく使用が承認されました。PCV13は定期接種として扱われます。切り替え時の対応法を解説します。

 ① 初回接種3回がまだ終わっていない子ども
 生後2ヶ月になったら、11月1日まで接種を控えることなく、PCV7の接種を始めてください。病気はワクチンが済むまで待ってくれません。初回接種3回の途中で11月1日になれば、以後はPCV13に切り替わります。途中で切り替わっても、新規6種類の免疫はきちんと付きます。

 ② 初回接種3回がすでに終わっている子ども
 1歳の誕生日を迎えたら、3ヶ月以内に追加接種を1回受けてください。11月1日以降はPCV13に切り替わります。1回の接種でも新規6種類の免疫はきちんと付きます。PCV13に切り替わるまで接種を控えることは、あまりお勧めできません(厚生労働省は、平成24年5月1日以降に生まれた子どもは1歳6ヶ月まで遅らせる選択肢もあると言っていますが)。11月1日までにPCV7を4回完了した場合は ③ をご参照ください。

 ③ 初回接種3回と追加接種1回の計4回が完了している子ども
 4回目の接種から8週間以上あけて、生後14ヶ月から59ヶ月の間に、PCV13を1回接種することができます。これを「補助的追加接種」といいます。補助的追加接種に限り、任意接種の扱いです。このあたりが予防接種貧国ニッポンの残念な現状です。有料ではありますが、補助的追加接種を受けることを強くお勧めします。PCV7を完了していても、残り6種類の血清型に対抗する免疫はできていません。1~2歳以降にも肺炎球菌による髄膜炎は起こりえます。わずか1回の接種で身体の守りをさらに固めることができますので、ぜひ(必ず)接種を受けてください。

 13価の小児用肺炎球菌ワクチン(PCV13)の最新情報は厚生労働省のホームページにも載っていますので、そちらもご参照ください(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/qa_haienkyuukin.html)。

2013年8月6日火曜日

水痘・ムンプスの各ワクチンの二回接種(改訂版)


 水痘(みずぼうそう)、ムンプス(おたふくかぜ)のワクチンは、わが国では任意接種(国の責任で行わない。有料)の扱いにとどまっています。そのため接種率が30~40%と低く、年中どこかで病気が流行しています。水痘、ムンプスともに、重篤な合併症を稀に起こすことがあり、軽い病気と侮ることは決してできません。

 欧米などの諸外国は、定期接種かつ二回接種を徹底することで、水痘・ムンプスの排除に成功しています。日本と世界の差を痛感させられます。

 当院は従来、一回接種を行っていましたが、流行に巻き込まれて罹患する子どもが少なからず見られるため、現在は二回接種をお勧めしています。免疫を早期につけて確実に長持ちさせるために、以下の接種スケジュールを推奨いたします。MRワクチンとの同時接種もできます。
  水痘;1回目を1歳ですぐに、2回目を3ヶ月後(遅くとも2歳まで)に
  ムンプス;1回目を1歳ですぐに、2回目を就学前(5~6歳)に

 1歳以降にワクチン接種を始めた場合も、それに見合ったスケジュールがあります。お気軽にご相談ください。

 * 2012年6月27日 初版、 2013年8月6日 改訂第二版

2013年3月13日水曜日

予防接種の最新情報

 予防接種の制度がこの数年間で大きく変わっています。いずれも赤ちゃんにとって望ましい方向に動いていますが、お母さん方にとりまして変更に付いていくのは大変であろうと思います。

 最近の数ヶ月間に変更された点は次のとおりです。
a) BCGの接種期間が2013年4月から「生後3ヶ月以上6ヶ月未満」から「生後3ヶ月以上12ヶ月未満」に延長されます
b) 四種混合ワクチン(三種混合ワクチン + 不活化ポリオワクチン)が2012年11月に開始されました
c) ヒブワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン、子宮頸がん予防ワクチンが2013年4月から定期接種化されます
d) ヒブワクチンの追加接種が、「おおむね1年間隔」から「7ヶ月以上の間隔」に2012年11月に変更されました

 したがいまして、新しい制度における予防接種のスケジュールは次のとおりです。

  1. 生後2ヶ月でヒブ、小児用肺炎球菌。できればロタ、B型肝炎も
  2. 1ヶ月後にヒブ、小児用肺炎球菌、四種混合。できればロタ、B型肝炎も
  3. 1ヶ月後にヒブ、小児用肺炎球菌、四種混合
  4. 1ヶ月後に四種混合
  5. 1週間以上あけてBCG
  6. B型肝炎3回目を2回目から5ヶ月以上あけて
  7. 1歳でMR、ヒブ(追加)、小児用肺炎球菌(追加)。できれば水痘、おたふくかぜも
  8. 四種混合(追加)を3回目から1年以上あけて
  9. 水痘は4~12ヶ月の間隔で2歳の誕生日までに2回目をお勧めします
  10. 3歳以降で日本脳炎。幼稚園年長児(就学前1年間)でMR2回目。おたふくかぜも同時期に2回目をお勧めします

2013年3月1日金曜日

BCGの対象年齢が変更されます(平成25年4月1日以降)

 平成25年4月1日から、BCGの対象年齢が「生後3ヶ月から1歳になる前々日まで」に延長されます。標準的な接種年齢は「生後5ヶ月以上、8ヶ月未満」です。

 したがって、ヒブ・小児用肺炎球菌・四種混合(以上は定期接種)、ロタ・B型肝炎(以上は任意接種)の各ワクチンを先に終えて、BCGを後に回すことができるようになります。接種スケジュールの作成がだいぶ楽になります。

2013年2月13日水曜日

二酸化塩素による除菌の効果は???

 「空間除菌ウイルスブロッカー」「空間除菌ウイルスガード」など、首から提げると細菌やウイルス対策ができると謳う商品が出回っています。

 これらの商品の主成分は二酸化塩素です。国民生活センターの分析によりますと、その有効性と安全性に多くの疑問が出されています。要旨は、(1) どの程度の除菌効果があるか分からない、(2) 二酸化塩素の拡散が製品により大きく異なる、(3) 二酸化塩素が食品添加物であることを根拠に安全性を謳っているが、必ずしも商品自体の安全性ではない、(4) インフルエンザへの予防効果を謳うことは薬事法に違反する、などです。詳細は同センターのホームページをご参照ください。
http://www.kokusen.go.jp/test/data/s_test/n-20101111_1.html

 臭気で気分が悪くなったという報告、ストラップによる首締め事故の危険性もあり、当院ではお勧めできない商品です。

追記(2月21日)

 空間除菌剤「ウイルスプロテクター」によって化学熱傷を生じたという事例が相次いで報告されています。消費者庁は、同製品の使用を中止する勧告を出しました。直ちに使用を中止してください。

2013年2月12日火曜日

署名運動の御礼 ~すべてのワクチンの定期接種化を~

 ヒブ・小児用肺炎球菌・子宮頸がん予防・水ぼうそう・おたふくかぜ・B型肝炎・成人用肺炎球菌の各ワクチンを定期接種で受けられる制度を早急に実現するために、来院される皆様に署名運動をお願いしておりました。

 おかげさまで109筆のご署名をいただきました。まことにありがとうございました。大和市医師会を通じて国に提出いたします。

 ヒブ・小児用肺炎球菌・子宮頸がん予防ワクチンは、平成25年4月からの定期接種化が決まりました。残る4種のワクチンにつきましても、粘り強く定期接種化を訴えてまいります。